室伏選手は、人間のパワーを競い合うハンマー投げという競技において、初めは世界の高い壁をなかなか超えられませんでした。
どうすれば、圧倒的な体格やパワーを備えた世界のトップ選手に勝つことができるのか?
彼が世界のトップレベルになっていく過程の中で大きな変化だったのは、
「技術や体力だけでなく、自分の心とハンマーが一体となる感覚」を身につけたことでした。
では、どうやってハンマーと自分が一体化する感覚をつかんだのか?
それは、実に日本的な行為ですが、
「ハンマーを磨く」ことでした。
どうでしょう?
例えば、サッカー部がスパイクを磨く、
野球部がグローブ・バットを磨く、
料理人が厨房器具を磨く…
イチローは絶対バットを投げず、そっと置く事は有名ですよねぇ。
彼はある日から、毎日、時間にすれば5分ほどのことですが、その間、こころを込めてハンマーを磨いていきました。
次第に、「どれで洗うのがハンマーにとって一番気持ちがいいんだろう」と、
真剣に思っていました。
彼はハンマーを磨くという行為によって、
ハンマーと向き合い、ハンマーの気持ちになってみることができるようになったのです。
これは非科学的なことではなく、
脳科学的にみれば、「きっとハンマーも気持ちいいに違いない」と思うことが、
辺縁系の働きを促し、ハンマーを磨くと同時に、自分の感覚を磨いていたのです。
仕事においても、スポーツにおいても、
ロジカル(大脳新皮質)と感覚(大脳辺縁系)の両面を磨くことが大事かと。
室伏広治選手の言葉で好きな一文です。
「チャレンジできることの喜びには限界などなかった」
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